今回は、「円安・円高」とは何なのかと言う為替の超基本的な部分を丁寧に解説いたします。
相場感覚を身につける第一歩として、是非身につけていってください。
目次
為替レートとは
みなさん「為替レート」と言う言葉を新聞やニュースで聞いたことがあるかと思います。
基本なので簡単に説明すると「為替レート」とは、ある通貨を別の通貨に交換する際に必要な価格のことを指していて、例えば、
1ドル=100円
なら、1ドルに交換(購入)するには、100円が必要ということになります。
そして、為替は土日を除いて24時間世界の市場を通じて取引されていて、為替レートも24時間変動しています。
そしてこの為替レートは、「需給の駆け引き」で価格形成されます。
つまり、人気が高い通貨は価格が上がるし、人気のない通貨は価格が下がります。
詳しい仕組みについては下記をご覧ください。
円安・円高とは
新聞やニュースなどでよく耳にする
「円安になった」とは、
「円の価値が下がった」
ということを意味します。つまり今まで
1ドル=100円
でドルに交換できていたのが、円の価値が低下してことにより、例えば
1ドル=110円
でないと交換できなくなってしまうことを指します。
逆に「円高」とは、
「円の価値が上がった」ことを意味するので、
今まで1ドル=100円でドルに交換していたものが、今までよりも安い
1ドル=90円で交換しますよ!となるわけです。
・円安=円の価値が低下 ➡︎その分ドルが高くなる
・円高=円の価値が上昇 ➡︎ 安くドルが手に入る
◯Question
ではどうして「円安・円高」という現象が起きるのでしょうか?
それは、通貨の「人気が変動しているから」です。
通貨の人気と為替
為替(レート)は市場で取引されているため、ペアとなる相手の通貨より、人気になればその通貨は買われ価格が上昇するし、人気がなくなれば売られて価格が低下します。
先ほどの例で言えば、
最初は1ドル=100円で交換しますよ!
となっていたのに、ドル金利上昇などドル人気が高まると、ドルが買われ
もう110円でないと1ドルには交換できませんよ!
という状態になるわけです。これが円安であり円安という現象が起こる仕組みです。
そしてこの「通貨の人気」というのは様々な要因で高まったり、低くなったりします。
例えば、円の金利が上昇すれば、円での運用、例えば国債や定期預金、貸出金などで得られる利益が増えるため円の人気が高まります。
➡︎ 円高・ドル安
逆に、円の金利が下がれば運用で得られる利益が減少するため
➡︎円安・ドル高
となります。
こういった通貨の変動要因は金利だけではなく、国の信用や国際情勢、輸入・輸出の増加など様々で、詳しい要因の一覧と説明は以下をご覧ください。
通貨と私たちの生活
みなさん、「円安」・「円高」が私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか、ご存知ですか?
なんとなく、物の値段が高くなったり安くなったりという部分で実感することもあるかと思います。
ここからは、私たちの生活に及ぼす影響についてご紹介いたします。
「円安・円高」が及ぼす生活への影響
「円安」とは先ほど説明した通り「円の価値が下がること」です。
「円高」とは「円の価値が上がること」です。
よって次のような影響があります。
物価上昇 (円安)
◯円安
円の価値が下がるということは、「物価が上がる」ことを意味しています。
なぜなら、円の価値が低下しているということは、1ドルを手に入れるのにより多くの円が必要となり、
結果、円安前より多くの仕入れコストを支払って品物を輸入しなくてはならず、国内においてもその分価格が高くなるからです。
分かり易いように数値と図を用いてご説明します。
・例
1ドル=100円の時に1個1ドルのリンゴを輸入しようとすれば
当然1個あたり100円必要になります。
しかし、1ドル=110円に円安になると、リンゴは1個1ドルなので
1個あたり110円必要になります。
つまり、「輸入コスト」が上がるのです。
よって、それは日本国内で売る際も、円安で仕入れコストが上がった分、価格を上げて売ることに繋がります。
例で言えば、10円円安になった分、リンゴを10円高く売ろう!
という流れになります。
このように、「円安」になると輸入する品物は全て値上げ圧力が、かかることになります。
また、輸入品以外にも値上げの圧力がかかり易いことから、私たちの生活に大きな影響があります。
物価下落(円高)
◯円高
逆に「円高」となった場合、円の価値が高まり、輸入品の値段が下がります(物価下落)。
なぜなら、円の価値が高まるといつもより安くドルと交換できるので、その分安く品物を仕入れることができます。
そのことから、私たちは、安く輸入品を手に入れることが可能になります!
リンゴの例を用いると、
1個1ドルのリンゴは、
1ドル=100円の時に比べ
1ドル=90円の時の方が
90円で仕入れられるので価格を抑えることができます。
それで、余力が生まれ、日本国内の市場においても値下げ圧力がかかりやすくなります。
各業種の業績への影響と年収 (円安)
◯輸出企業
円安になると、海外で製品を売り、得たドルを、より多くの円に交換できるので、業績が向上。また、価格も下げ易く国際競争力も向上します。
年収やボーナスのアップが期待できる!
1ドル=100円の時よりも
1ドル=110円の時の方が
同じ1ドルの売り上げでもより多くの円を受け取れるので企業の業績が向上。
結果、社員への還元がなされ易くなります。
◯インバウンド企業
円安になると、より安いドルで多くの円が手に入るので、海外からの訪日客が増えます。すると地元観光業や関連グッズ、旅行会社等の業績が向上します。
観光客は、同じ1ドルでも、
1ドル=100円の時と比べ
1ドル=110円の時の方が
多くの円を受け取れるのでお得に観光ができるというわけです。
どちらも、1ドルでより多くの「円」を獲得できる点が業績の向上につながって、最終的には社員の給料が上がったり、ボーナスが上がったりと私たちの暮らしに影響を与えます。
逆に、
◯輸入企業
輸入コストが上がり、業績ダウン。給料やボーナスが減額される恐れがあります。
◯旅行会社
円の力が弱まることで、ドルを獲得するのにより多くの資金が必要となり、国内から海外への旅行客が減少します。
しかし、前述の通り海外からの観光客は増加します。
基本的に日本は「製造業」が経済の屋台骨として機能しており、「円安」は日本経済全体で見ると良い影響があり、景気の拡大に期待がかかります。
各業種の業績への影響と年収 (円高)
「円高」のときは全く逆の結果となります。
◯輸出企業
円の価値が高まると、海外で製品を売り得たドルがより少ない円にしか交換できなくなるだけでなく、利益を保つために値段を高めると競争力が低下し業績がダウンします。
それが、社員の給料・ボーナスのダウンへ繋がる可能性があります。
例えば、
1ドル=100円の時に、売り上げ高1ドルを円に換金すると、
100円となりますが、
1ドル=90円の時に、交換すると1ドル90円しか受け取れず、
1ドル=100円の時よりも損していることがわかります。
◯インバウンド企業(観光業)
円の価値が高まると、1ドルで交換できる円の額が減少するので、海外の観光客が減少します。
それが、社員の給料・ボーナスの低下に繋がる恐れがあります。
逆に、
◯輸入企業
円の価値が高まることでより少ない額で、品物を輸入でき業績の向上に繋がります。
よって、社員の給料・ボーナスの上昇が考えられます。
そして、
◯旅行会社
より少ない「円」で多くのドルが手に入るため、国内から海外への旅行客が増加します。
しかし、海外からの観光客は減少するので、立ち回り次第で業績への影響が出ます。
投資家への影響
基本的に投資家にとっては「円安」の方が運用成績が上がります。
なぜなら、外貨建ての債券や株式、投信、外貨預金などで運用されている方にとっては、円安になればなるほど、多くの「円」を受け取れることが出来るからです。
1ドル=100円の時には、外貨建ての時価が1ドルなら
円に直すと100円を受け取れますが、
1ドル=110円の時には、外貨建ての時価1ドルで
円にすると110円を受け取ることができます。
以上のことから、円安になった際に多くの利益が受け取れるということになります。
まとめ
迷った時には
・円安=円の価値が低下 ➡︎ドルが高くなる
・円高=円の価値が上昇 ➡︎ 安くドルが手に入る
を思い出していただけると幸いです。
また、この記事で円安・円高の基本的な仕組みと実生活への影響がイメージできるようになっていただけると嬉しいです。
相場感を獲得したら実践に移るかと思います。前述した通り、外貨預金という形を取らないことをお勧めします。
今後、またこのような資産運用の基礎知識をご説明していこうと思いますので今後とも宜しくお願いいたします。
執筆者
T
・現役銀行員
融資と資産運用の実務経験のほか
FP、簿記、銀検、TOEIC、ビジネス法務、2種外務員、保険販売員…
を保有。
最近は、コロナウイルスの影響で融資業務に専念している。